第4回 堀豊氏(2008年博士後期課程修了)

私は2005年、兵庫県明石市にある県立研究機関に主任研究員として勤務する中、46歳で名城大学大学院総合学術研究科に入学しました。社会人としてのキャリアにおいて、あえて学び直しの道を選んだことは、私の人生における大きな転機となりました。
本研究科では、鈴木輝明先生、高倍昭洋先生、田中義人先生、中田喜三郎先生のご指導の下、「播磨灘における低次生態系の変化及びその修復に関する研究」に取り組み、養殖ノリの色落ち対策を進めることができました。現場で培ってきた知識と、大学院で得た多角的な視点が融合することで、研究への理解は飛躍的に深まったと実感しています。
大学院進学当時は、40代後半からの挑戦であったこともあり、周囲から懸念の声が寄せられたこともありました。しかし、あのとき本研究科で学ぶ機会を得なければ、現在の自分はなかったと確信しています。進学を勧めてくださった先輩方、熱心にご指導いただいた先生方、そして共に学んだ同期の皆様には、心から感謝しております。
入学当初は、単位取得のため毎週末に兵庫県から名古屋へ通学していました。JRや近鉄、地下鉄を乗り継いでの移動は決して楽ではありませんでしたが、多様な分野の講義はいずれも新鮮で、毎回新たな視点に触れながら学ぶことができました。若い頃とは異なる学びの面白さを実感した貴重な時間であったと感じています。
なかでも馬場俊彦先生との出会いは、私にとってかけがえのないものでした。先生の講義でいただいた「本当の自分」は、現在でも折に触れて読み返し、学生への向き合い方や自身の在り方を見つめ直す際の指針となっています。先生の講義は、単なる知識の枠を超え、人としての在り方や教育者としての姿勢を深く考える契機を与えてくれました。この経験は、今もなお私の中で生き続けています。
また、修了後も総合コアプログラムを通じて、分野や立場を超えた交流が続いていることは、本研究科の大きな魅力の一つです。ここで築かれたつながりは、年月を経ても色あせることなく、現在の活動を支える貴重な財産となっています。両親の他界により実家を離れ、名古屋を訪れる機会は減りましたが、本プログラムのおかげで再びこの地を訪れることができるのは、大きな喜びの一つです。
本研究科修了後は、県の管理職として日本海および瀬戸内海の研究機関を運営する業務に従事しました。2019年に退職した後は再任用職員として、内水面分野や小学生向けの普及教育にも関わりました。その後ご縁をいただき、兵庫県内の私立大学における新学科の設置に参画することとなり、現在は学科長・教授として教育・研究に携わっています。

私が現在所属している吉備国際大学農学部海洋水産生物学科は、2023年4月に兵庫県南あわじ市に開設されました。鳴門海峡に隣接する自然豊かな環境のもと、「海を知り、海を活かす」をテーマに掲げ、地域社会に貢献できる人材の育成を目指しています。従来の水産学に加え、釣りや水族館、海洋レジャーなど多様な分野を学ぶことができる点も本学科の特色です。現在は、海の貧栄養化対策や小規模養殖の可能性、新たな観光資源の創出など、地域振興に資する研究・教育に取り組んでいます。さらに今後は臨海実習施設や、近隣に設置される水族館の活用を通じて、実践的な教育内容の一層の充実を図る予定です。 興味を持てる分野に出会えれば、学びに費やす時間は決して苦ではありません。少子化が進むなかではありますが、学びを志す中高年の方々は確実に存在すると感じています。この文章を目にされた皆様も、名城大学大学院総合学術研究科で学んだあとで、吉備国際大学大学院地域創成農学研究科に来られ、淡路の自然に囲まれながら海について学ぶのも面白いのではないでしょうか。


堀 豊 博士(学術)
吉備国際大学農学部海洋水産生物学科 学科長・教授
2008年名城大学大学院総合学術研究科博士後期課程修了
(2026年6月30日)
◆「修了生からの近況レポート」では、総合学術研究科の修了生から近況報告と研究科の魅力を語っていただきます。
