第3回 山本淳子氏(2005年博士後期課程修了)

山本淳子氏

総合学術研究科博士後期課程を卒業してから現在に至るまでを振り返ります。 

大学院時代の研究テーマは、「アスコルビン酸オキシダーゼの食品生化学的、分子生物学的研究」でした。アスコルビン酸オキシダーゼは、名前の通りアスコルビン酸(ビタミンC)を酸化する酵素です。この酵素の役割については、はっきりしたことが分かっていません。そこで、アスコルビン酸オキシダーゼの性質を明らかにするための研究を長年行っていました。博士後期課程に入ってからも、ご指導いただきながら、アスコルビン酸オキシダーゼに関するテーマで研究させて頂くことができました。遺伝子工学的手法からアプローチし、研究室のテーマでもあるストレス(塩・乾燥)に対する影響を論文に発表することができました。しかし、論文にまとめるまでの道のりは長く、遺伝子操作や植物の扱いについては未熟であり、遺伝子組み換えし、カルスから発芽させ、確認し、育てた植物にストレスをかけデータをとりと繰り返し行いうまくいかないことも多くありました。論文が通った時は感激もひとしおでした。また、多くの植物を育てたことも思い出です。アラビドプシスやタバコはもちろん、シュガービート、パームツリー、トルコキキョウ、アナアオサなど興味深い植物を多く扱うことができました。トルコキキョウについても論文にまとめることができました。 

学位を取得して3年後に名古屋女子大学食物栄養学科(管理栄養士養成)の専任講師に採用されました。そこでの担当教科は、調理科学、食品学、食品加工学、調理科学実験などです。調理科学実験は、食品の調理過程の変化を理論だけでなく実験を通して確認し、理解を深めることができます。実験の様子の写真です。米の浸漬実験を行っています。

米の浸漬実験の様子

研究は学部生のゼミが中心でしたが、修士課程の学生も担当しました。そのときの研究テーマとして「アナアオサ」を選び、「アナアオサの生育条件の影響」、「アナアオサの利用」について研究を進め学生の修士論文としてまとめることができました。また、アナアオサを食に利用できないかと考え、凍結乾燥後パウダーにして食パンに添加し、「食パンの付加価値の向上を目指した凍結乾燥アナアオサ添加パンの開発」というテーマでエリザベスアーノルド富士財団から2年間助成金をいただくことができました。これらの研究を進める上で、総合学術研究科の博士課程での経験が大変役立ったと感じています。

3年後の2011年に、現在所属している愛知学泉短期大学食物栄養学科に移り現在に至っています。所属の食物栄養学科は、栄養士養成の学科で、担当科目は食品学、調理科学、食品材料実験などです。研究については、アナアオサの食利用について研究を進め、「うどん麺への凍結乾燥アナアオサ粉置換の影響」、「アナアオサ粉置換量が食パンの抗酸化性、力学的物性および嗜好性に及ぼす影響」について論文にまとめることができました。また、地域の特産物の付加価値を見出すことを目的に、未使用資源の食品や地産野菜について成分分析や官能評価を行い論文にまとめています。 その他、食品ロス削減レシピ開発、地産野菜のレシピ開発など地域連携の取り組みを行っています。特に岡崎の特産品である、むらさき麦、法性寺ねぎ、黒米・赤米、筆柿、いちごなどの成分分析、物性測定、嗜好調査、官能評価などを行って、学生と共に新たな食品としての利用を考えています。これらのことを通じて、学生が栄養士として自分で考え行動し、柔軟に対応できる人材に育ってほしいと思い取り組んでいます。その中で、地域の食材や野菜について知らない学生が多いことを感じていました。そんなおり、2023年に岡崎農遊会から愛知の伝統野菜である岡崎の「法性寺ねぎ」栽培の依頼を受けたことがきっかけで、食品材料実験の授業の中で、野菜作りを取り入れました。野菜作りのポイントや有機農業についての講義を受けながら実習を行っています。写真は植え付けと収穫の様子です。

植え付けの様子
収穫の様子

連携としては、藤川のまちづくり協議会やJAあいち三河と提携を結んでおり、2023、2024年度では、四季を通じた岡崎野菜のレシピ集を作成することができました(以下の写真)。

岡崎野菜のレシピ集

また、豊田市の環境学習施設「エコット」では食品ロス削減の親子料理教室を2022年度より毎年実施し、学生の考えたレシピの実践の場となっています。

今後も、学生の教育と研究を両立させ、地域貢献できることを目指していきます

山本淳子 博士(学術)

愛知学泉短期大学教授
(2026年度より愛知学泉大学短期大学部へ名称変更予定)

2005年名城大学大学院総合学術研究科博士後期課程修了

(2025年11月6日)

◆「修了生からの近況レポート」では、総合学術研究科の修了生から近況報告と研究科の魅力を語っていただきます。